|
「破産寸前の都財政」
石原の就任当初、東京都は未曾有の財政危機に瀕していた。青島都政時代の最後である1998年度(平成10年度)の一般会計の実質的な赤字は約3500億円に達し、その後も年々巨額な財源不足が生じると見込まれていた。このまま推移すれば、財政再建団体への転落が現実のものになる。
財政再建団体とは、民間企業でいえば「破産」にあたる。それは東京都が主権を失い、国の自治省(現・総務省)の管轄下に置かれることを意味している。石原は中央集権体制を打破し、地方主権を確立することを目指しているが、財政再建団体に転落したら元も子もない。
そこで石原は知事就任日に自らの給与の10%カットを打ち出し、財政再建推進プランを策定。最重要施策として推し進めていくことになる。具体策としては、職員の給与カット、5000人の定数削減、監理団体の見直しなど都庁の内部努力を始め、施策の見直しや、徴税率をあげ歳入を確保するなど多岐に渡る。
「内部努力なしで都民に負担は求められない」
給与カット案自体は、青島都政時代から、都議会自民党が提唱していた。だが、青島は、職員団体との交渉を嫌ったのか、取り上げようとはしなかった。しかし石原はそれを決断した。都職員の給料は都民の税金で支えられている。バブル崩壊以後、長引く景気低迷で、都民が苦しんでいる中、都職員が犠牲を払わないで通らない。
プランでは、これまで手厚い福祉政策の象徴だった老人医療助成やシルバーパスなどの事業見直しは避けられなかった。過去に例のない規模の手数料、使用料の値上げにも踏み切る必要がある。つまり都民に負担を求める形になるわけで、給与カットに象徴される内部努力なしで、都民に福祉を切りますとか、シルバーパスに制限を設けるといっても通用しない。
結果、最も厳しい内容となった4%の給与カットは、18万人に及ぶ都職員に課され、2400億円の削減を見込んでいる。その後、国や他の地方自治体でも職員の給与カットが行われるようになった。石原の決断は、日本全体の公務員の給与体系に楔を打ち込んだのだ。
|
注)東京都職員の給与削減の詳細
2000年(平成12年)4月1日から2002年(平成14年)3月31日までの2年間は、給料(本給)の4%と、期末・勤勉手当の0.45月分(8.6%)をカット。これ以外にも期末手当の引き下げや管理職手当のカットを含め、トータル(一般会計ベース)で1600億円の削減となった。
その後、2002年(平成14年)8月1日から同じ内容の給与削減が同年12月31日まで再開された。2003年(平成15年)の1月1日から2004年(平成16年)3月31日までは、給与のカットは2%及び期末手当の0.05月引き下げなどが行われる。給与改定によりマイナス1.64%のベースダウンとなり、実質的には4%程度の給与削減となっている。これらが合計で800億円の削減となっている。
|
「国と地方のグロテスクな関係」
更に石原はプランの中で、国から地方への税源移譲を求めている。国と地方の租税負担の割合は、国税:地方税が6:4に対して、歳出ベースでは国:地方が4:6と逆転している。これは国から地方へ地方交付税や国庫支出金などの形で国税の再分配が行われていることによるものであり、地方自治体の財政運営は国からの移転財源に大きく依存していることになる。
国は1999年(平成11年)に地方分権一括法を制定したものの、肝心な税源の移譲は認めていないため、地方主権とは名ばかりであった。国は地方交付税と国庫支出金で地方をコントロールしているのであり、その権限を手放さないのだ。そしてその権限は、地方圏と大都市圏の間にアンバランスな状態をもたらしている。地域別人口1人当たりの国庫支出金は、大阪9万円、東京7万円に対し、沖縄25万円、島根24万円といったように大都市圏より地方圏に多く配分されている。
つまり国は大都市圏で徴収された消費税や所得税を始めとする国税を国庫支出金という名目の元、地方にばら撒いているのである。大都市圏は「地価が高い」「社会資本整備の経済波及効果が地方圏よりも高い」といった特有の事情があるにも関わらず、まるで考慮されていない。
要するに財務省は、地方交付税も国庫支出金も国の財政が逼迫している中で、切り詰めたがっているが、国税の収入が減るから税源の移譲もしたくない。総務省は、地方交付金、他の省庁は国庫支出金制度を地方がコントロールのために手放さない、といったグロテスクな状況が続いている。そしてそのような国に牛耳られた体制を歓迎する地方自治体もあるということだ。
「真の地方自治獲得のために」
真の地方自治とは、地方自治体が自らの財源と自らの責任に基づいて行財政運営を行う「地方主権」を確立して初めて実現できるものである。そのために石原は消費税や所得税等から、地方消費税や住民税等への税源移譲を速やかに実現することを始め、地方交付税制度、国庫支出金制度の抜本的な見直しを提案している。
都道府県の中で唯一地方交付税の不交付団体である東京都は、歳入の根幹が法人二税を中心とした都税収入に大きく依存しており、景気に左右されやすい構造となっている。そのため税源移譲等による安定的な税収の確保が緊急の課題であるのだ。銀行業等への外形標準課税もこのような背景のもと、地方への税源移譲を図るために行われたのだ。
小泉内閣は地方交付税、国庫支出金、税源移譲を「三位一体」で改革すると言っていたものの、2002年(平成14年)の10月30日の地方分権改革推進会議では、国庫負担金の廃止縮減の方向が示されたものの、税源移譲は明記されなかった。国庫補助負担金の削減が先行するのは単に地方へ負担を転嫁することであり、速やかに国から地方への税源移譲を行うべきであり、そのために石原は国との戦いを続けていく。
「都庁職員にコスト意識・経営感覚を」
一般的に、公務員はリスク感覚やコスト意識が欠如していると言われる。都庁は18万人もの職員により構成される巨大組織である。その1人1人の意識改革なくしては財政再建および今後の自主運営は立ち行かないであろう。石原は上述したように財政再建のために様々な策を講じているが、その目的は財政再建団体への転落阻止だけではない。自ら財源を捻出するという経験を通して、都庁職員にコスト意識、経営感覚を身につけさせようとしているのだ。
それは2006年度(平成18年度)から、都庁全部署の会計方式を単式簿記ではなく民間企業が採用している複式簿記(バランスシート)にするという姿勢にも見て取れる。自治体の会計方式は単式簿記と定められているが、単式簿記では歳入と借金の区別がないなどコストに対する意識が希薄にならざるを得ない。複式簿記では減価償却や負債情報が明示され、事業の費用対効果をより正確に把握することが可能となり、職員の意識改革に繋がる。
ただ現行法令では自治法と会計法で自治体の会計方式は単式簿記と定められており、単式簿記との二重作業が生じるため、国に18年度までの法改正を求めている。石原は東京から新しい会計基準のモデルを発信することにより、国全体の公務員のコストに対する感覚を身につけさせようとしているのだ。
「まだ道半ばな財政再建」
プランでは2003年(平成15年)に予想される6300億円の財源不足を埋め合わせることが目的とされ、2002年(平成14年)の7月まででその達成状況は80.6%になる。(*資料参照)
ただこれはあくまでも1999年(平成11年)に策定した予測値の達成状況であり、景気の低迷により都税収入が当初の予測より伸びないなど現実との乖離が生じている。そのため一見、赤字解消寸前と映るが、実際には、財源措置を行わないと2003年度(平成15年度)には約3600億円の赤字が生じる(2002年7月時点)と見込まれ、財政再建はまだ道半ばということになる。石原は今後も財政再建を推し進めながら、職員の意識改革を進めていく。
最新情報および詳細はこちらから
「財務局」ホームページ
http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/


|