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ビッグレスキュー東京2000

「危機とは突然の変化」

 「クライシス」という言葉がある。日本語に訳すと「危機」という意味である。それでは危機とはどのような状態であるのだろうか?それはクライシスという言葉の語源を追ってみると明らかになる。クライシスとはもともとはギリシャ語のクリネイン(分水嶺)という言葉が語源であり、「突然の変化」を意味するものである。
 阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起こった1995年(平成7年)はまさに突然の変化によって日本中が震撼した1年であった。そして最近では大地震の再来が繰り返し危惧されている。それに付け加え、アメリカで起こった凄惨なテロリズムにより、日本でも危機管理に関する危惧がしきりに取り出されるようになった。

「頼りになるのは自衛隊」

 実際に大地震やテロリズムなどに見舞われた時に、いかなる組織が事態をおさめることができるのだろう。そう考えたときに我々は困惑する。果たして警察だけで対応することができるのだろうか、と。
 他国の場合を鑑みるに、実質的にそのような緊急事態に対応できる機動力や技術力を持っているのは「軍隊」である。それは日本にも同じことが言えるのではないだろうか。日本におけるその「軍隊」がなにを指しているかといえば、それは「自衛隊」に他ならない。日本では憲法上、「軍隊を保持していない」ということになっているが、自衛隊が「軍隊」であることは明らかである。阪神・淡路大震災では自衛隊の出動要請が遅れたために、いたずらに死者を増やしたと言われている。それは逆に言えば自衛隊の出動が早ければ助かった命があったということだ。
 しかし我々のほとんどが自衛隊の能力はもとより、その存在自体についてあまりに無知ではないだろうか。それどころか戦後民主主義教育の悪しき所産として、我々は「自衛隊アレルギー」というようなものを煩っており、それが問題の本質を曖昧にしてしまう。抽象的な議論に終始する憲法解釈論はその最たるである。実際に災害やテロリズムに見まわれた時に、頼りになるのは自衛隊つまり軍隊であるのだ。
 
「陸海空3軍が合同で参加、参加人数2万5000人」

 2000年(平成12年)に実施された東京都総合防災訓練(ビッグレスキュー東京2000)は上述した点を中心に見据えて実施された。陸海空の3軍が合同で参加し、他にも、警視庁、東京消防庁などの官公庁に加え、NTTや東京電力、都営地下鉄などの企業や公団、各種のボランティア団体なども参加し、都民との連携を果たした。参加人数は自衛隊員を含めて都内10会場で2万5000人にのぼった。日本史上、最大規模の画期的な防災訓練であり、自衛隊にとっても陸海空3軍の総合防災訓練は初のことであった。

「危機を想定した様々な訓練」

ビッグレスキュー東京2000(中央区)
2000年9月3日
ビッグレスキュー東京2000(中央区)

画像提供:東京都

 訓練は大規模地震(マグニチュード7,2、震度6強)が発生し、東京区部を中心に広域的な被害が発生しているとの想定に基づき行われた。銀座会場では、航空自衛隊のヘリコプターにより上空から被害情報が収集され、それと同時にバイク隊の先導で陸上自衛隊、消防庁などの大型車が出動した。
 篠崎会場では、橋が崩れ落ちたとの想定のもと、浮橋を架設し、自衛隊の輸送トラックがその仮設橋を次々と渡り、緊急物資が運搬された。
 駒沢会場では救急医療陣による「トリアージ」の集中的な訓練が行われた。トリアージとは緊急時の病人やケガ人に対して、その病気やケガの緊急度や重要度を判定し、治療の優先順位を決めるものである。平時であれば治療は先着順である。しかし緊急時にはその考え方を180度変えなければならない。
 1人を救うために4人が犠牲になるよりも、治療の順番を変えることにより、1人の犠牲で4人を救うといった、本来は神でもないかぎり許されることのない究極の判断がこのような事態においては必要になる。緊急時には集団の利益と、個人の利益との価値の逆転が起こるということを象徴する訓練であった。

「自衛隊を「軍」と呼び続けたわけ」

ビッグレスキュー東京2000(江東区)
2000年9月3日
ビッグレスキュー東京2000(江東区)

画像提供:東京都

 突然の変化に対する想定は政治家にとって不可欠の要素である。それがなければ国民の財産と生命を守ることなどできない。
 石原にはそのような事態に対するリアルな想像力がある。そしてそれこそがこの訓練の実現に繋がったのだ。
 訓練を通して、石原は、我々国民に目に見える形で自衛隊という国軍の存在と、その総合的な機動力を示した。それは「いざというときに自衛隊は頼りになるという印象を国民に持ってもらいたい」という考えに基づくものである。
 緊急事態において、「なにに頼っていいのか分からない」という状況は不安を助長するものである。そのようなときに「自衛隊」の存在を想起してもらうことは、混乱する国民に安心感を与える。
 そしてそれと共に、石原は国民に向けて、「国家にとっての軍隊とはいかなるものであるのか」という問題をも提起した。
 だからこそ石原は訓練に参加した自衛隊のことをあえて「軍」と言い続けたのである。それは軽薄な挑発などではなく、「自衛隊というものの本質を、言葉によってごまかすのはもう止めよう」という呼びかけである。そしてそれは日本を守るために職務を遂行している「自衛隊という名の国軍」に対する敬意と愛情の証左でもあるのだ。

詳細はこちらから
東京都公式ホームページ
http://www.metro.tokyo.jp/index.htm


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