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東京都レンジャー

「世界的にも貴重な自然を持つ小笠原諸島

 東京都は2003年の4月から小笠原の一部の指定地域(父島列島にある南島と母島の石門地区の2箇所)で日本初の行政主導のエコツーリズムを実施している。エコツーリズムとは環境保護と観光振興の両立を図る新しい観光の考え方のことだ。日本国内でもエコツアー自体は小笠原や屋久島などで以前から行われているが、これらは民間が自主的に行っているものであり、行政主導で行われたのは日本で初めてのことだった。

 小笠原は約5000万年前の火山活動で誕生して以来、一度も陸続きになったことがない日本で唯一の海洋島であり、1830年までは無人島だった。そのため地球上でも小笠原にしか存在しない固有の動植物が溢れ、世界的にも貴重な自然的価値を有している。

「名ばかりの環境省レンジャー


小笠原諸島南島

小笠原諸島母島の原生林

 しかし国立公園の監督官庁である環境省はその保護にために何もしてこなかった。環境省には、レンジャー(自然保護官)がいるが、そのほとんどは、許認可事務などのデスクワークに追われ、現場を知らないといっても過言ではない。更にレンジャー以外にも複数の業務を兼任しており、数年ごとに異動もある。このような状況では現場に精通した真のプロフェッショナルが育たないのも当然ともいえる。

 それどころか小笠原に関しては、環境省は林野庁と共に作った「世界遺産の候補地に関する検討委員会」で世界遺産の候補地にあげておきながら、1人だけいる担当のレンジャーもその勤務地は箱根といった状態で、環境省の職員すらも常駐させておらず、それは今も変わらない。結果、一部の地域では、長年の観光利用で自然破壊が進んでいたのである。   
故に石原は何もしない国に頼らず、都独自の保護を行うために、エコツーリズムを導入したのである。そして更に、国立公園の改革を推進するために、来年度の夏から東京都独自のレンジャー制度の発足を決断したのである。

「日本初! 地方自治体による本格的なレンジャー制度」


アルピニストの野口健氏

画像提供:野口健事務所

 「地方自治体で自然を守る」といったレンジャー制度は他の自治体でも実施しているが、たとえば雇用日数が多い方で年100日、少ないものだと月4時間といったようなケースが多い。言ってしまえば、「たまに普及啓発で歩いて下さい」というレベルで、プロフェッショナルには程遠い。報酬もそれほど多くなく、中には無報酬というものもある。副業的な位置づけで、レンジャーとして生計を立て、仕事に集中できるという制度は皆無である。

 翻って東京都レンジャーは年間300日以上は現場に出なければならない勤務体系になっており、給与面でも月額約20万円が保証されている。初年度は小笠原と多摩地区に3人ずつ配置される予定だ。上述したように小笠原には環境省のレンジャーは1人も常駐していない。奥多摩に関しても、環境省のレンジャーはたったの1人だ。更に奥多摩は秩父多摩甲斐国立公園の中にあるため、一都三県にまたがる国立公園を1人で管轄しているという非現実的なものとなっている。今回の制度で、ようやく目に見える、実効性のあるレンジャー制度が確立するといえる。

「東京都レンジャー発足のエピソード −野口健氏が提案−」

 実はこの東京都レンジャー発足には面白いエピソードがある。2003年9月3日から4日にかけて「第四回エコツーリズム・サポート会議」(主催・東京都)が青森県弘前市で開催された。既に世界遺産に登録されている白神山地を参考に、世界自然遺産の国内候補地にあげられている小笠原諸島を実際に登録させるためには、「何が必要なのか」ということを検討することが目的であった。
 この時、委員の一人であるアルピニストの野口健氏が石原に提案したことにより、東京都レンジャーは発足したのである。野口氏は世界7大陸最高峰を史上最年少で制覇し、その後、エベレストの清掃登山や世界中を訪れてきたこともあり、国立公園の管理体制やエコツーリズムを始め、環境問題に造詣が深い。

 野口氏にこの時のいきさつとを伺ってみた。

「石原都知事なら決断してくれるかも知れない」

 「知事はヨットで世界中の海に行っているし、自然と遊んでいる。更にディーゼル車規制や行政主導のエコツーリズムなど国に先駆けて環境問題に取り組んでいる。石原都知事なら決断してくれるかも知れないと思っていました。だから白神山地の視察の後、『今がチャンス』と思って今回の提案しました。すると石原知事は、何と翌日の記者会見で発表してしまった。これにはすごく驚きました。これまで色々な政治家の方や行政の職員と話してきたけど、『前例がない』といった調子で、具体的に環境保護が進むことはなかった。環境破壊はすごい勢いで進んでいて、『前例がない』ではとても守れない。
 環境省のレンジャーはデスクワークばかりで、まったくといって良いほど、現場を知らない。たとえば世界遺産の白神山地でさえ、秋田県側と青森県側で2人しかおらず、その内の1人と実際に話したけど、現場に出ることはほとんどないという。これでは自然は荒れ果てるばかり。石原都知事の決断はまさしく東京から国を変えていくと思うし、僕も出来る限りのことをしたい」
 
 東京都レンジャーは初年度は小笠原と多摩地区に3人ずつ配置される。今後、更にその役割、人数ともに増やしていく予定だ。東京発・国立公園革命の波はまだまだ続く。


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