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「日本の近未来の危機」 |
時間的、空間的に狭小となった今日の世界では、近隣の外国の趨勢(すうせい)が自国に大きな影響を与える可能性は多大となった。その視点で考えればアメリカ国防総省が「彼らに脅威を与えている国などありはしないのに、極端な軍事力拡大を行いつつある中国の姿勢は不可解」といっているように、太平洋の覇権まで目指して軍事大国になりつつある中国の今後の在り方は日本の近未来を左右しかねぬ要因をはらんでいる。
現在でも日本は靖国神社がらみで中国に引きずり回されていると思う人もいようがそれは政治、経済がらみのことで、ほとんどの国民は太平楽をきめこんでいて国際関係での危機感などありはしまい。
米ソ対立の冷戦構造の頃にはソヴィエト機の北の領空侵犯の度に日米両空軍のスクランブルが繰り返されていたものだが、日本の国民にさしたる危機感などありはしなかった。それは相対的に眺めてアメリカの国力の圧倒的な優位への信頼感に依(よ)ったものだったが、これから日本に到来しようとしている事態はかつてとかなり違っている。それはなんといっても同盟国アメリカの国力の衰退と世界での孤立化という要因に依るもので、それへの冷静な認識無しに我が国の安全の確保はありえない。
無為のまま放ったらかしされてきた日本では最長の滑走路を持つ横田基地の共同使用が、アメリカ側の軍備の合理化のためというトランスフォーメーションの巻き添えで遅滞させられてきた過程で悟らされたことは、アメリカはその国力の限界を悟り出し、日本にそのための金を使わせながら日本から逃げ出す準備にかかっているという実感だった。間もなく、戦争好きのアメリカが行う戦争はあくまで石油とイスラエルのためのものでしかなくなるだろう。その信憑(しんぴょう)性については専門家たちにまかせるにしても、アメリカの国力への妄信はタブーだと思われる。
そして我々が中国、北朝鮮という隣国と構えている緊張は、拉致というテロの現実、度重なる領海領土の侵犯、あまつさえ既存の領土の領有権への無視、さらに彼等の領有への主張といった悪夢に近い現実ではないか。
日本の近未来における厄介は恐らく北京オリンピック終了後の中国経済の破綻(はたん)をきっかけに訪れるだろう。是正出来ぬまま続いている中国の質の悪い高度成長は今現在世界規模の環境破壊とバブルを生んでいるが、バブルは当然弾け中国経済は挫折を迎えよう。
日本も国内での格差が政治案件となりつつあるが中国の抱える格差はそんな程度のものではない。日本の外務省の把握している数値でも過去1年間に中国で起きた暴動の数はなんと3万7000回、抗議運動を加えれば7万を越すという。つまりあちこちで1日100件以上の暴動が起き、それが一方的に鎮圧されているという信じられぬ事態がかの国では進行している。
先般オリンピック問題のために出向いたロンドンで旧知の優れたエコノミスト、ビル・エモット氏と歓談したが、彼も私と同意見で、日本の経済学者が中国経済の量の大きさに幻惑されたちすくんでいるのを笑っていた。よしんば中国のGDPが日本を上回ったところで、現在日本の30分の1という国民1人当たりの所得が、これから10年でその半分に追いつくということはまずありえまい。
加えて中国経済の不安定な歪(ゆが)みは簡単には修復出来ずに、頻発する暴動の数が示すように無理な経済政策がバブルの消滅という破綻を招くのは自明なことだ。例えば中国で出回っている金融資本の70%は企業全体の60%を占める杜撰(ずさん)な経営の続く国営企業に向けられていて、それはそのまま不良債権化するだろう。
といった経済パニックが到来した時、経済政策に無能な共産党政府が何をするかということを予測してかかることが必要に違いない。過去の事例を眺めても彼等の常套(じょうとう)手段として、国民の不安不満をそらすために独裁政権が軍事的冒険主義に走る可能性は十分にあり得よう。
その具現化は彼等の近隣の台湾への侵犯、あるいはかねて領土権を主張している尖閣諸島の実効支配への軍事行動によるかも知れない。その時、かつて自らが沖縄の一部として返還した尖閣諸島の領有に関して日本がハーグの国際裁判所に提訴しようとした時証人としての協力を拒否してきたアメリカが果たしてどれほどの意欲で日本を守り、台湾を守ろうとするかは危うい話だ。
戦争はいかなる美名の下で行われても所詮(しょせん)生命の消耗戦に他ならない。そしていかなる戦争においても最後は地上部隊の生命が最大の消耗に晒(さら)される。そしてアメリカの軍事力で最も劣悪なのは、第4軍としてある海兵隊は別にして、陸軍である。それは現実イラクで証明されている。そしてまたアメリカの世論は、虚弱故に犠牲を強いられる地上軍の数に敏感に反応する。
そうした状況の中で、日本にとってその安全のために活用できるアメリカの軍事力は海軍だけだろう。強大な機動力を持つアメリカ海軍は現下の世界情勢の中でヨーロッパと強い関わりのある大西洋での重要な任務はあまり考えられない。石油ルートのシーレーンの確保は日本や台湾、他の東南アジア、オセアニア諸国にとっても致命的な要因だがそのために日本が彼等との協力の下にもっと多くの責任を果たすべきに違いない。
日本はすでにオーストラリアの参加も待ってリムパックの演習を繰り返してきたが、アメリカの航空母艦に日本の艦載機を搭載するといった具体的な前進があってしかるべきとも思われる。

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