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『非業な太陽』 石原慎太郎
渺茫
空は 無惨な夕焼けだ
あふれた臓腑のひったぎり 煮えくりかえった夕焼けだ
消えた月日の暦とともに やっと終わった馬鹿騒ぎ(カーニバル)の
歌と 仮面と 饒舌(ざれごと)を
砂へ この手で埋めるのだ
今は 落日の歌さえかしましい
俺はとっくに倦きたんだ
鳥は鳴かずに還っていい
紅くただれたこの憂愁
ただそれだけに眼を据えよう
見ろ
陽が沈む 陽は沈む
ギンギンギラギラ 陽が沈む
遺ったものはなにもない
砂はとっくに冷えきった
全体 何が蘇ろう――
ひしゃげた「原理」も「真理」もない
いじけて惨めな乳くりあい
三月で流れた胎児(がき)だけだ
ああ 狂猥の蜃気楼
それも 今では消えるがいい
襤褸(ぼろ)と 腐肉と 泥酔と
出来損ないの芸術か
慈善は 架刑でほどこそう
待っていろ
俺の心よ 待っていろ
ああ なぜ太陽を惜しむのか
喪に高々と黒い帆で
荷揚げの人夫(ひと)も クレーンもない
胸(こころ)に還る入り船を
俺の心よ 待っていろ
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『石原慎太郎が十代に描いたファンタジー』
(発行・株式会社青山アートコンサルタンジーより転載)
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